連載「円山動物園 栄光への階段」

第21話

8月28日 レディが群れに帰る理由


円山動物園にはレディというチンパンジーの赤ちゃんがいます。実は、お母さんのエリサは不慮の落下事故により、生後2か月のレディを守って頭を強く打って亡くなってしまいました。それからは、飼育員が交代交代でミルクをあげたり付っきりで人工哺育をしています。

現在、円山動物園では、彼女を群れに返すためのプログラムを実施しています。徐々に群れに慣れさせ、数年かけて群れで暮らせるようにしたいのです。それはどうしてでしょう?
今日、お昼休みに飼育員の一人がお客さんにレディを見せながら説明してくれていました。


人に育てられたチンパンジーの末路は悲しい。テレビではかわいいところだけ映っているので多くの人は気づかない。
彼らは「猛獣」なので、子どもの頃には芸をさせたり人間の格好をさせたりしてかわいがるけど、大人になると力が強いため非常に危険な動物なのだ。
ところが、群れから離れて人の手で育ったチンパンジーは、仲間同士のマナー(あいさつなど)が出来ないため、結局、群れに戻しても仲間はずれやいじめの対象になってしまう。
大人になると最後まで孤独に暮らさなければならないのだ。

我々がレディを群れに返そうとしている理由はそこにある。
赤ちゃんチンパは人気者だが、安易に芸をさせたり、人間に慣れさせ過ぎると結局、彼女のためにならないことを飼育員は知っているからだ。

円山動物園ではチンパを24時間群れのまま生活させている。
多くの動物園は、昼間だけ一緒の檻に入れて、夜は個室に戻している。飼育の都合で、体調管理しやすい(エサの消費量やフンを調べやすい)ためだ。ところがこれでは群れで生活するチンパの本当の姿とはいえない。

担当飼育員は、手間をかけてでも、群れの中の一頭一頭と時間をかけてコミュニケーションすることで体調管理を行い、24時間の群れ飼育を実現している。

こういう事は、あまり人には知られていないけど、実に「円山イズム」な部分なのです。
ちょっといい話でしょ?

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◆◇◆小さな一歩◆◇◆

うちの係にはベテランの主査(事務職)がいます。これまでいろんな職場を経験していて、その知識を存分に活かして動物園の仕事を改善していきます。動物たちのエサの仕入れでも、過去に中央卸売市場にいた経験を活かして、在庫管理を徹底したり、購入方法を変えて年間数十万単位で節約します。自ら農家や漁協に買い付けにも行きます。エサ以外の調達でも安い調達方法をいろいろ知っていて、どんどんコスト削減していきます。ベテランってすごいですね。ホント、経験には敵いません。

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