都市間競争を予想する
私はより良い(安い)行政サービスを求めて住民が引っ越すなんて、少なくとも札幌で現実的に起こるとは信じていなかった。
しかし、最近その認識を改めるようになった。そのきっかけがこれである。
国立社会保障・人口問題研究所が「日本の市区町村別将来推計人口(平成15年12月推計)」(結果表に自治体単位の人口表あり)を出している。(こちら)
驚くことに、札幌市は2030年に至っても、2000年に比べてまだ人口が多い状態である(102.6%)。
近隣都市を見ても、小樽市(72.8)を除いて軒並み、江別市(105.7)北広島市(120.2)石狩市(99.8)と高い水準で推移する。大都市では、仙台市(110.4)さいたま市(118.6)千葉市(104.3)横浜市(104.8)川崎市(106.6)福岡市(114.5)など高い水準で推移している。ひと安心だ。
一方で、大都市でも、名古屋市(88.3)京都市(92.4)大阪市(83.6)神戸市(94.7)広島市(95.4)北九州市(83.5)など、危機感を感じるべき都市もある。もちろん市町村の中には2030年までに人口が半分以下になると予想されている所もあり、その危機感は計り知れない。
さて、この統計から私が予想するのはこんな都市間の住民獲得競争だ。
10年前の私たちは、今日のような少子化を背景とした全国の大学の熾烈な学生獲得競争が起こることなど予想できただろうか。
都市間競争が激化したとき何が起こるか。
最も私が恐れるのは、大都市近郊ベッドタウンの逆襲である。
例えば、ベッドタウンA市が「年金で暮らせるまち」をコンセプトに住民税減税を行い、陶芸や自然、スポーツなどを売りに退職者層をターゲットとした住民誘致策をとる。A市からなら札幌の病院にもすぐ通えるし、金のある元気なシニアは美味しい客だ。団塊世代を狙うビジネスを誘致して市内に展開するという差別化を行えば、札幌から引っ越すことに抵抗感は少ない。
例えば、ベッドタウンB市が「ビジネスマンのための快適ベッドタウン」をコンセプトに住民税減税を行い、高齢者・障害者向け福祉を大胆に切り捨てて、小さな政府をつくる。サービスは最低限だが税や生活費が安いまち(水道料金は札幌の3分の1)を売りにして、若年ビジネスマン家庭を誘致する。子どもの教育には規制緩和で力を入れる一方、医療の必要な高齢者や障害者は大都市さっぽろに押し付けるという作戦だ。
さあ、困ったのは札幌市だ。まちには失業者があふれ、ビジネスマンは隣の町に納税し、退職者は隣の町で金を落とし、医療費のかかる高齢者や障害者がどんどん札幌に引っ越してくるが、もうすでに近隣市では小さな政府を作っているので、札幌市が福祉を切ることはできない。
生活保護受給者は年々増え続け、まちに活気が無くなり、若者が将来に希望を持てなくなる。
地価とは関係の無いドーナツ化、都市空洞化の始まりだ。そこで札幌は法人税減税による大胆な企業誘致を画策する。しかし、いち早く人口減少にさらされた西日本の大都市の方が大方の企業をさらってしまっていた。打つ手なし。
これはフィクションだが、都市間競争に、いつ、どのまちから、本気の行動に出るか。ライバルはどこにいるか。自治体も企業並みに経営環境に鋭敏でなければならなくなるのは、どうやら間違いない。
(2004.2.22)