モデルケース「あなたのまちに新しい市長がやってきた!」
さあ、新しい市政のはじまりだ。
でも、どうやってつきあっていけばいいのだろう?
とにかく何とか「市民志向の改革」を新市長とともになしとげなきゃ!
これはある地方公務員の苦悩を綴ったレポート風小説です。
※このレポートは、私と仲間との書簡を元に再構成したものです。実在の市役所とは関係ありません。
1 市民志向の改革を実現するために
(1)最も重要なのはリーダーシップだ。
これなくして改革は絶対無理だよな。
でも、どんな市長でもスーパーマンってわけじゃない。最初から完璧を期待しちゃいけないよね。
たぶん新市長も役所に対する不信感を持っているだろうし、役所の仕事や職員各人の問題意識の状況だって十分知りえてないだろうしね。
市長も誰を信じて良いのかわからなくて不安だろうなあ。
私たち職員が、市長の政策づくりを支えていくには、まず信頼を勝ち得なければならないと思う。
政策のまえに信頼関係の構築が大事だよね。
あせらず、あきらめず、話し合うことにしよう。その努力をするか、しないであきらめるかで、2年目、3年目の成果が大きく変わるに違いない。
(2)政策、理念で改革はできない。
あれ?と思う人もいるかもしれないけど、役所の改革を考えるときに、過去の失敗を参考にすると実はここが重要なポイントだと思うんだ。役人は非常に優秀だし、すでに課題発見もできてると思うし、様々な先進事例や改革本も読み尽くしているよね。政策づくりだって一部のスキもない素晴らしい作品を作れるんだよ。なのに変えられない。実現できない。
なぜなんだろう?
思うに、課題発見の能力はあっても、改革能力がないんじゃないだろうか。
右肩上がりの時代しか体験してないから改革の文化もないし、その方法論(Do
How)がわからないんじゃないかな。
改革には強い権力行使と明確な判断が必要なことは誰しもが理解しているけど、実際やったことがない。
しょうがないから自分の過去の成功体験から旧態とした手法を引っ張り出してきて、事に当たろうとするんだ。
これじゃ変われるはずがないもんな。変えようとする人が「Do How」つまり改革のガイドライン、改革のチェックリスト、改革マニュアルを示さない限り、何をすべきか決断できないんだ。
(3)単発の改革ではなくPDCAサイクルにする。
過去のほとんどの行革は、そのときだけの運動で収束してる。
10年前にやったはずの行革メニューと同じ課題が今でもあがってくるなんてしょっちゅうさ。
改革は仕事のやり方を変えることであって、新しいPDCAサイクルを作ることだと思うんだ。
それってもちろん、人事組織マネジメントや財政マネジメントと一体となった改革サイクルじゃなきゃダメだ。
(4)小さな改革の成功を共有する。
新市政の1年目は市長も役所の仕事を熟知してないから、大きな改革はできないと思う。
その代わり、変革を強く意識付ける象徴的な取組みをパイロットプログラムとしていくつか実現していく必要があるよね。
それによって、庁内の改革派の期待感を集め、2年目以降に大きく開花させるというシナリオがいいと思う。
小さな成功を積み重ねることで、役職者の間にも認識の変化、環境の変化を意識付けることができるし、これが大きな改革の土壌になると思うんだ。
2 改革能力の調達を
(1)外圧戦略
市民代表による会議を外圧として使うことは有効だと思う。
でも、それだけで推し進めるのは行政として無責任な気がするの。
それでも、最も正統性が強く、市長のイニシアチブを支える最強の推進装置(変革ブースター)であることに変わりはないから、これを裏から支える仕組みを考えてみようと思う。
(2)外部からの改革能力の調達
役所内に改革能力がないなら、迷わず外部から調達すべきだよね。
最もいいのは、信頼できる経営パートナーを見つけることだ。コンサルを雇って成功した県や市も多い。
お金が無いのであれば、地元の企業経営者を委員に委嘱して、経営改革会議をつくり、市長の改革ブレーンになってもらうのもいいかも。このやり方を使ったのが政令市もあったね。
いずれにせよ、役所内部だけで改革ができるというのは思い上がりだ。
ただし、これらの外部パートナーを有効に生かすには、庁内に改革の世話人が必要になるだろう。
この改革世話人が本気で改革をしようとしていて、しかもその人に十分な改革のセンスがなければ、外部の力をうまく使うことはできず、逆に庁内の反発だけを高めてしまって、改革を遠ざけてしまうことにもなりかねないな。
(3)内部からの改革能力の調達
改革の世話人は部長でも担当者でも構わないんだ。役職や職責ではなく、人材そのものが見極めるポイントだと思う。
その人が外部との接点になることと、もう一つ大事な役割がある。
それは庁内に眠る改革派を目覚めさせ、ネットワーク化することだと思うんだ。
改革は誰もやりたがらないものだ。「やりたくない人にやらせる」ことほど難しいものはないもんね。
改革をやるには、「やりたい人に手を挙げさせる」「手を挙げた人にやらせる」体制づくりが必要だと思う。
庁内公募による改革プロデューサーチームをつくることも有効な手段だね。
彼らは、現場での推進役であり、普及役であり、未来の幹部候補になるだろう。
外部パートナーの改革能力を、彼らに移植することが永続的な改革能力の定着にもつながるんだ。
手法として重要なのは、コアになるプロジェクトチームにメディアを持たせることだと思う。
検討プロセスやメッセージを常にオープンに伝えさせ、小さな成功もこのメディアを使ってフィードバックするようにする。
そうやって、徐々に改革への期待感を高めていこう。
改革世話人は勇敢でなくちゃいけないな。みんな変化は怖いもの。
それを恐れない人間がいるってことを庁内に示そう。方法は簡単だよね。
「私は変わる。改革を恐れない。だから皆も変わろう。」と宣言するだけでいいと思う。
3 市長のプロデュースを
(1)市長とのコミュニケーション
市長も人間だ。職員が下から様子を伺っているだけじゃ何も起こらないし、その言動に一喜一憂するだけだよ。
有能なリーダーには、必ず影の有能なブレーンがいます。市長をプロデュースし、素晴らしい市長にしてあげよう。
これは、地元財界、地元政界だって同じことを考えるはずだ。早く市長に実績をプレゼントしてあげることが大事だ。
きっと、それが市長の自信になり、判断することに勇気を持てるようになると思う。
(2)市長に信頼されるために
市民に信頼される市役所になるには、まず、市長に信頼される市役所にならなきゃね。
最終的には、市長以下、市役所全体が市民を前にして「ひとつのチーム」になれるかどうかだよ。
市長に信頼されるコツ、それはたった一つ。「市長を信じること」だと思う。
信じればこそ、本音でまちのあり方を語れるはずだもんね。
仕事って生き様がそのまま出ると思うんだ。若手職員はそのことを鋭く見抜くでしょう。
常に「本物かどうか」「本気の改革かどうか」が試されるんだと思う。庁内の有志がどれだけこの思いを共有できるか、そこから始めてみたらいいのかもしれない。
そして、決してあきらめないことだ。仲間と互いに励ましあって進んでみよう。
(つづく)
2002.12.8